あっさり素朴系の名古屋めし、きしめん
古くから東日本と西日本を結ぶ交通の要所であった名古屋は、時代とともに独自の文化をはぐくんできた。「食」の分野でも然りで、有名なものが全国区のファンをもつ「名古屋めし」だ。バラエティ豊かなご当地グルメの中から今回紹介するのは、きしめん。もっちりとした平打ち麺に、ムロアジや鰹を使った和だしが優しく香る。こってり系の多い名古屋めしの中でも素朴な味わいのきしめんは、朝食や急ぎのランチ、夜の〆麺にもぴったり。ホームに降り立った瞬間から名店ひしめく名古屋駅周辺のきしめん屋、厳選10店をお届けする。
名古屋駅近くでおすすめの「きしめん屋」10選(目次)
店舗 (クリックで詳細) |
特徴や内容 |
① やぶ福 | 老舗麺処が贈るうどん並みのこし |
② きしめん よしだ エスカ店 | 老舗が守る王道のきしめん |
③ 驛釜きしめん(えきかまきしめん) | 「朝きしめん」でエネチャージ |
④ 名代きしめん 住よし JR名古屋駅10・11番ホーム店 | 冷え冷えのきしめん×サクサクのかき揚げ |
⑤ とり五鐵(とりごてつ) | 有名親子丼との贅沢なコラボ |
⑥ さがみ庭 (さがみてい)キャッスルプラザ店 | 名物てんこもり「なごやめし会席」 |
⑦ きしめん亭 エスカ店 | 4種類の特製だし、あなたはどれが好み? |
⑧ パーゴラ(マリオット名古屋アソシア内) | ホテルならではのくつろぎとともに |
⑨ 大須きしめん | 地元気分を味わうならここ |
⑩ かぶらや総本家 | 飲みの〆にもやっぱりきしめん |
① やぶ福
老舗麺処が贈るうどん並みのこし
名古屋エスカにある「やぶ福」は創業80年超の地元民に愛される麺処。そば、うどん、きしめんを多彩なアレンジで独自メニューを展開する。なかでも“名古屋愛” にあふれるお店の名物が、八丁味噌煮込みうどんや、各種きしめんだ。
きしめんは「名古屋コーチンきしめん」「とろろきしめん」「みそかつきしめん」「八丁味噌きしめん」などメニューいろいろで目移りするほど。透き通ったスープはだしをしっかりきかせた奥行のある味わい。きしめんはうどんのようにこしがあるタイプで食べごたえがある。おなかの鳴るランチタイムには鶏唐揚げとごはんがつく「きしめん定食」、みそかつ丼ときしめんの美味しいとこどり「半々セット」をぜひご賞味あれ。
② きしめん よしだ エスカ店
老舗が守る王道のきしめん
明治23年創業の「よしだ麺」がプロデュースするきしめん専門店。名古屋駅の地下街エスカにあり、地元民や観光客、出張中のビジネスマンなどでいつもにぎわう。
毎日自社工場から直送されるきしめんは、小麦後、塩、水のみを使用。シンプルだからこそ素材選びと製造過程にこだわり、手打ち麺のような優しいのどごしと、もっちりと弾力のある食感を実現している。
メニューは、青菜・油揚げ・鰹節がのるスタンダードな「きしめん」を筆頭に、みそきし、かつカレーきし、おかめ、あんかけなど種類豊富。麺の美味しさをダイレクトに楽みたくて通年冷製専門という人も。なかでも人気は「えびおろし」で、海老や野菜の天ぷらとわかめがのったきしめんに、香り高い天然だしが見事にマッチする。
③ 驛釜きしめん(えきかまきしめん)
「朝きしめん」でエネチャージ
朝7時オープンで、ミニきしめんとごはんや納豆がセットになる朝定食が好評。名古屋駅構内という立地もあり、観光や仕事前の腹ごしらえをしていく常連客も多いとか。かつおやこんぶ、ムロアジから丁寧にとった特製のだしは風味豊か。自慢の無添加きしめんはこしが強めのもちもちの食感が信条だ。
天ぷらおろし、玉子とじ、鶏南蛮、ざるなどの各種きしめんを取りそろえ。また、こく甘ダレがくせになる隠れた人気の「牛めし」のほか、手羽先や味噌串カツもあるので思わずビールがすすんでしまう。名古屋観光のお土産やおつかいものには当店の「きしめん詰め合わせ」をぜひ。
④ 名代きしめん 住よし JR名古屋駅10・11番ホーム店
冷え冷えのきしめん×サクサクのかき揚げ
JR名古屋駅のホームには立ち食いきしめん屋がたくさんあるが、メディアでも取り上げられる往年の人気店が「住よし」。とはいえ住よしも各ホームにあり、味や雰囲気が微妙に異なる。ここでは在来線が乗り入れる10・11番ホームに注目。新幹線ホームにある店舗とちがいフライヤー搭載で揚げたての天ぷらを食べられるのがうれしい。
とくに人気は「冷やしおろしかき揚げきしめん」で、濃いめのだしをまとった冷え冷えのきしめんに、サクサクに揚がった大きめのかき揚げがどん! おろした大根と生姜の爽やかさがも心地よい。途中下車して食する人もいる「住よし」のきしめんは、ホームごとの食べ比べも楽しいだろう。
⑤ とり五鐵(とりごてつ)
有名親子丼との贅沢なコラボ
名古屋駅に直結のJRセントラルタワーズ13階にある鳥料理専門店。東京日本橋にある老舗「玉ひで」の監修する店舗で、旨みと弾力たっぷりの名古屋コーチンと新鮮な卵を惜しみなく使った親子丼が名物だ。
お客さんの大半がこの親子丼をたのむが、名古屋グルメをより堪能できることから各種定食も人気。親子丼の相方として手羽先の唐揚げやチキン南蛮などが選べるが、「鶏きしめん」もはずせない。特製の鶏チャーシューは柔らかく、ピンクの縁取りが愛らしいかまぼこが名古屋らしい華やかさを添える。
店内には落ち着いた雰囲気の個室があり4人~10人に対応。ビジネスランチや記念日の会食などにもおすすめだ。
⑥ さがみ庭 (さがみてい)キャッスルプラザ店
名物てんこもり「なごやめし会席」
名古屋グルメは種類が多くボリュームもあるため、制覇するとなれば2~3日は要するだろう。忙しい食いしん坊の悩みを解決するのがさがみ庭の「なごやめし会席」。どて煮、コーチン焼き、手羽先、味噌串カツ、うなぎひつまぶしといった名古屋の名物を、一流の味と盛り付けで一度に楽しむことができる。もちろんきしめんもオンリスト。ひかえめながらも上品な味わいでしっかりとその存在感を示している。
また、看板メニューの牛すきやコーチン味噌鍋でも〆麺にはきしめんが登場。さらには2種のお子様御膳ももれなくきしめんつきで、世代を越えたきしめんの人気の高さをうかがえる。
⑦ きしめん亭 エスカ店
4種類の特製だし、あなたはどれが好み?
ずらりと並ぶ日本酒とその上にともる提灯、壁には名古屋の歴史を映した記録写真の数々。工夫を凝らした店内はスタイリッシュで洗練された雰囲気だ。新しさすら感じる「きしめん亭」だが、じつは創業90年の超老舗。今やどこでも食べられるようになったきしめんだからこそ、本当に美味しいものを提供したい。そんな使命感から、きしめんは最も食べやすい幅と厚みを追求、つゆは一番だしのみを使うなど、ゆるぎないこだわりを堅持する。
伝統を受け継ぐ一方で、枠にとらわれず新しい味に挑戦する柔軟性も。赤・白・味噌・カレーの4種のつゆにあわせた個性派ぞろいのアレンジきしめんがせいぞろい。寒い季節に人気の「牡蠣きしめん」は、大粒でぷりぷりの牡蠣が味わい深い赤つゆと口の中でまろやかに溶け合う。ほかにも名古屋名物を堪能できる定食や丼もの、ちょっと足りないときにうれしいサイドメニューなど、使い勝手のよさも手伝って新たなファンを獲得中。
エスカ内北口(ノースゲート)近く
⑧ パーゴラ(マリオット名古屋アソシア内)
ホテルならではのくつろぎとともに
名古屋駅真上にそびえるタワーホテル「マリオット名古屋アソシア」。その15階にあるレストラン「パーゴラ」は、活気あふれるパフォーマンスキッチンと明るく開放的な雰囲気が魅力のオールデイダイニングだ。旬の素材と手作りにこだわる和・洋・中のグルメは種類豊富で、ビュッフェの楽しみを最大限に満喫できる。観光客には名古屋名物コーナーが人気。ひつまぶしや味噌串カツとともに、もちろんきしめんもいただける。オーダー式で茹でたてを受け取ったら好きな具材をトッピングできるのがちょっと楽しい。数えきれないほどあるアイテムの中のほんの一部とあなどるなかれ。香り高いつゆとつるつるのきしめんは心ほどける味わいだ。
ホテルならではのラグジュアリーかつリラックスした空間でゆっくりと食事を楽しめるのがうれしいところ。小さい子ども連れでも安心して利用できる。
⑨ 大須きしめん
地元気分を味わうならここ
“早い・安い・うまい” がそろう名古屋市民ご用達の立ち食いきしめん屋。こしのあるきしめんは、他店と比べて細めなこともあり、するするとのどを通る。看板メニューは見た目もインパクト大の「唐揚げきしめん」。甘みのあるあめ色のつゆの上にふつうの3倍くらいある特製唐揚げがどどんと鎮座。もちろん熱々なので豪快に添えられた鰹節が楽しげに躍る。もっと食べごたえがほしい人にはボリュームたっぷり「カレー唐揚げきしめん」がおすすめだ。
駅前にきしめん屋はたくさんあるが、昼時になるととにかく混む。昔ながらの地下街サンロードにもぐり、地元民に混じって安定の味を立ち食いスタイルで手軽に楽しもう。
⑩ かぶらや総本家
飲みの〆にもやっぱりきしめん
名古屋駅太閤通南口から徒歩1分。全国の漁港から届く鮮魚を使った料理が自慢のサラリーマンたちのオアシス酒場。「うなぎひつまぶし」や「どて味噌煮込み」「名古屋がっちゃん(甘味噌ベースの豚の胃袋)など名古屋名物の充実ぶりから観光客のファンも多い。
温・冷選べる定番のきしめんは、飲みの〆にもおすすめ。名古屋人好みの濃い口のだしは後味すっきりでいくらでも食べられる。満腹未達であれば「明太カルボナーラきしめん」の変化球を。辛みのある濃厚ソースともっちりきしめんの最強コラボに箸が止まらない。
掘りごたつの座敷で仲間と盛り上がるのもよし、板前の華麗な手さばきを見ながらカウンターでしっぽり飲むのもよし。美味しいお酒とご当地グルメで、名古屋の夜を思うままに楽しんで。
[土曜・日曜・祝日] 11:00-24:00
きしめんは名古屋大衆グルメの立役者
きしめんの由来には諸説ある。雉(きじ)の肉を入れた「雉麺」から、また紀州藩がつくっていた「紀州麺」から名付けられたともいわれるが、真相は定かでない。歴史文献によると江戸時代に登場した平打ちうどんは「ひもかわ」と呼ばれていたそうだが、明治初期には名古屋で油揚げと青ねぎをのせた「きしめん」が食べられていたという。
知られていないことも多いきしめんだが、名古屋庶民の生活に根付いた大衆グルメであったことには間違いない。そして令和の今も、きしめんはその素朴な味わいで人々のおなかを優しく満たしている。名古屋観光で地元気分を味わいたいなら絶対はずせない名古屋めしのド定番。でも食べ逃しの心配は無用、なぜなら市内どこを見てもきしめ屋さんがあるから。