東京只中にあるディープな中華圏・上野
上野公園の散策や芸術鑑賞、ショッピングなどさまざまな楽しみ方で観光客に人気の上野。この街が、東京有数の中国人街であることをご存じだろうか? その中枢はアメ横商店街の入口にある「アメ横センタービル」。地下1階の食品街を歩くと、乾物や加工食品から、一般のスーパーではあまり見かけないレアな生食品まで、幅広い中華食材がところせましと売られている。
このことからも推察できるように、上野界隈には現地さながらの本格中華を味わえるお店がたくさんある。訪れるのは上野で働く中国・台湾の人や観光客、地元の家族連れなど、客層の雑多感もまた上野らしい。この記事では数ある上野の中華の名店から、厳選10軒を厳選してお届けする。
上野でおすすめの中華料理店 10選(目次)
店舗 (クリックで詳細) |
特徴や内容 |
① 麻辣大学 | いつもの四川料理とはちょっと違う |
② 台湾料理 新東洋(しんとうよう) | アメ横の片隅にあるリトル台湾 |
③ 中国料亭 翠鳳(すいほう) | 華麗な空間でワンランク上の中華グルメを |
④ 中国料理 山久(やまきゅう) | ふと食べたくなる安定の町中華 |
⑤ 故郷味 上野店(ふるさとあじ) | ラム肉の串焼きは異国情緒がギュッ! |
⑥ 昇龍(しょうりゅう) | 一日に千個売れる名物の餃子 |
⑦ 蓮風(りんふう) | めくるめく高級食材のオンパレード |
⑧ 富貴坊(ふきぼう) | 黄金色に輝くふわとろの至福 |
⑨ 火鍋 眞巴石(しんばせい) | 薬膳効果で体の芯からポカポカに |
⑩ 中国意境菜 白燕(ばいえん) | シェフの技術と実直さが料理に結実 |
① 麻辣大学
いつもの四川料理とはちょっと違う
JR上野駅から徒歩3。清潔感のあるスタイリッシュな空間で、医食同源にもとづく四川料理をカジュアルに楽しめるお店。上野界隈では比較的新しいグループに入る「麻辣大学」は、メディアでも紹介される人気店だ。人の顔より大きいぼんぼりのような超ビッグサイズの胡麻団子は若者の間でも話題。
ホルモン麻辣麺、蒸し鶏の四川ソース掛け、重慶焼魚、よだれ鶏など、多彩な看板メニューは辛党も納得の本格的な辛さ。中国ならではのさまざまな香辛料を加え、ふだん日本人が食べ慣れている四川料理にとはちょっと違うホンモノの味を堪能できる。なかには美容や健康に効果があるといわれる香辛料も使われ、おいしく食べて、デトックス作用も期待できそう。
より四川を感じられるシェフ推薦の料理や自慢の点心を存分に楽しめるお得なコースもあるので、グループでのにぎやかな食事にもぴったりだ。
京成上野駅から徒歩1分
[土曜・日曜・祝日] 11:00-16:00/17:00-24:00
② 台湾料理 新東洋(しんとうよう)
アメ横の片隅にあるリトル台湾
アメ横商店街にある1955年創業の老舗。小路を入ったところにあるので初めてだと見つけにくいが、ほかのお店の人に聞けばたいていわかる。台湾人シェフが腕をふるう台湾人も納得のゆるぎない本格台湾料理が食べられるお店。昼はしっかりお腹を満たせる麺や定食、ごはんもの、夜は現地の市場にいるような素朴な小皿メニューやおつまみ類、それに合う幅広いお酒レパートリーも魅力だ。
酸味と旨みが黄金コンビの「サンラーメン」や、ジューシーな豚肉が豪快にのった「パーコーつけ麺」、濃厚スパイシーな「カレーチャーハン」など、オリジナル感の強いメニューがちらほらと。個性的でもどこかやさしさと懐かしさがただようのが不思議で、もりもりと食べながら気持ちはまったり癒されていく。
アメ横の歴史とディープな雰囲気を今に伝える上野エリアでも貴重な一店だ。
③ 中国料亭 翠鳳(すいほう)
華麗な空間でワンランク上の中華グルメを
一歩足を踏み入れれば見上げるほど高い天井と絢爛豪華な内観にしばし圧倒される。四季折々の食材を駆使した見た目も美しい創作チャイニーズに定評があるレストランだ。
接待や慶事・法事など、特別なシーンで利用されることも多く、コース料理の充実ぶりが特徴。一人11,000円の「鳳凰コース」と7,700円の「翡翠コース」があり、フカヒレや北京ダッグ、アワビなどの高級食材を使った料理の数々を堪能できる。
もちろん普段づかいもおおいに可能で、ランチは「海老入り焼きそば」や「担々麺」などがお得なセットメニューで楽しめる(1,760円~2,200円)。またフカヒレ入りのスープや海鮮と季節野菜の炒め、豚ばら肉の柔らか煮や中国風リゾットなどが続く「特別ランチコース(2,750円)」は自分へのご褒美ランチや華やかな女子会にもぴったりだ。
至高の料理とともにワンランク上のひとときを過ごせる上野の中の非日常空間に酔いしれて。
JR各上野駅から徒歩3分
[土曜・日曜・祝日] 11:30-15:00/16:00-21:30
④ 中国料理 山久(やまきゅう)
ふと食べたくなる安定の町中華
JR上野駅の入谷口から徒歩4分。 夜はネオンの看板が目をひく地元民御用達の中華屋さん。1階のテーブル席のほかに2階もあって団体客を受け入れることも。
メニューを開くとまず豊富な品書きに心ときめく。定食、麺類、チャーハン、丼もの、点心、デザートまで。子ども時代がよみがえってきそうな定番アイテムが端から端まで並んでいる。昼から注文が多いのは「半チャンラーメンセット」(その反対も然り)。パラパラで香ばしいチャーハンとホッとする味わいのラーメンを、どの順番で食べるべきかと悩みながらハフハフ頬張るのもまた一興。ちょっと珍しいメニューでは、あんとパリパリのかたやき麺がマッチする「長崎チャーメン」もおすすめだ。
近所の人が一人でふらりと訪れたり、家族連れが和気あいいと夕食をとったり。上野の日常に溶け込む様子がなんとも温かみのある、町中華を絵にかいたようなお店だ。
[土曜] 11:00-14:30
⑤ 故郷味 上野店(ふるさとあじ)
ラム肉の串焼きは異国情緒がギュッ!
上野駅から徒歩2分。ちょっと変わった中華を食べたいという人に絶対おすすめのお店。
何が変わっているかといえば、よくある中華料理ではめずらしい「串焼き」を得意としている点。しかもただの串焼きではなく、中国東北地方の郷土料理であるラム肉の串焼きがてっぱんだ。スパイスがふんだんに香るラム肉は、独特のクセと旨みがあとをひく味わい。ほかにも羊マメ、牛ハチノス、羊マメ、鶏ヘッド、カイコまであって珍味好きにはたまらないディープな食体験を満喫できる。
串焼き以外のメニューもいろいろあるが、炒めも煮込みも前菜も、やっぱり羊やホルモンを使った異国情緒あふれるテイストが特徴。くわえて評判の四川料理はマウシューワン(激辛ホルモン煮込み)はじめ本場さながらの辛さと旨さで食通の舌と心をわしづかみにしている。いろいろな意味で刺激を求めている人、集合!
JR御徒町駅から徒歩1分
⑥ 昇龍(しょうりゅう)
一日に千個売れる名物の餃子
1957年にアメ横ガード下で創業した中華の老舗「昇龍」が、50年目の改装を終えて再オープン。1階のカウンターのほか2階はテーブル席が入り、これまでよりゆっくりと食事を楽しめるようになった。
とはいえ賑々しい下町の町中華風情はあいかわらずで、思わず昼からビールをひっかけたくなる雰囲気だ。そのお供はもちろん名物のジャンボ餃子。箸で持ち上げるとずっしり重い餃子は、厚めの皮がなんともたのもしいモチモチ感。なかの餡は控えめな味付けだが、たっぷりの肉とキャベツの甘みがバランスよく調和している。持ち帰りも含めれば一日千個を売り上げる人気とのこと。
ほかにも後味すっきりのラーメンや厚切りハムがレトロなチャーハン、乳白色がやさしいタンメンなど、多彩なメニューはどれも昭和を感じさせる懐かしい味わい。平成、令和そしてこの先もずっと、アメ横のこの地で変わらずにいてほしい。
JR御徒町駅から徒歩4分
[日曜・祝日] 11:30-20:00
⑦ 蓮風(りんふう)
めくるめく高級食材のオンパレード
不忍池のほとりのホテルパークサイド地下にある「蓮風」。数々の名旅館を手掛ける空間デザイナーによる内装は、スタイリッシュながら心落ち着くシックな雰囲気。特別感あふれる空間の中で、躍るように新鮮な海鮮をはじめ、季節の素材をふんだんに使ったこだわりの広東料理を満喫できる。伝統的な味と技法にくわえ、革新的なヌーベルシノワのテイストを楽しめることも醍醐味だ。
フカヒレ、タラバ蟹、ホタテ、伊勢海老、活エゾ鮑……、艶めくような高級食材を熟練の技で豪快かつ丁寧に仕上げる料理は見た目も味もさながら芸術作品。さまざまな調理工程を踏みながらも素材本来のよさを最大限に生かしているので、その時期ならではの美味を大切に味わいたい。
自慢の料理を存分に楽しめるコースは7,000円から50,000円と幅広く用意。ちょっと敷居の高さを感じてしまうなら平日限定のランチプレート(1,300円~1,600円)からトライしてみて。炒め物ひとつとっても黒毛和牛がお目見えするなど一段格上の一皿を楽しめる。
地下鉄湯島駅から徒歩2分
⑧ 富貴坊(ふきぼう)
黄金色に輝くふわとろの至福
上野駅から徒歩2分のホテル山百合1階にある庶民的な中華料理屋さん。財布にやさしい値段設定で昼時には近くで働く人たちがこぞって押し寄せる。
ここで紹介したいのが「ふわふわ卵と海老炒め」。数ある中華料理の中では控えめなグループに入りそうだが、これがリピーター続出の看板選手。名前に負けない卵のとろけるようなフワフワ感と、そこにやさしくからむ海老のプリプリ感が格別なのだ。ランチタイムは週替わりで登場するメニューで、これを目当てに来る人も少なくない。
もちろんほかにも人気メニューはあまた。おどろくほど豚肉たっぷりの酢豚や、山椒の辛さが痺れる麻婆豆腐、市場の臨場感を醸し出すスパイシーな台湾ラーメンなど。家庭的な接客にもホッとできる、心のお気に入りに追加したい一店。
京成上野駅から徒歩5分
⑨ 火鍋 眞巴石(しんばせい)
薬膳効果で体の芯からポカポカに
上野公園不忍池そばにある店名のとおり中国のあつあつ火鍋料理が自慢のお店。漢方や香辛料を駆使した薬膳火鍋は疲労回復や美容効果も期待できる注目のグルメで、その味は中国人お墨付きの実力だ。
火鍋は一人前から注文が可能。4種のスープまたはこの中から2種を組み合わせた鍋に、牛肉やホルモン、海鮮、野菜など好みの具材をしゃぶしゃぶしていただく。辛いものが好きなら断然おすすめは「重慶マーラー鍋」。鼻に抜けるさわやかな辛さと濃厚な旨味が特徴だ。コラーゲンたっぷりの「白湯スープ」やまろやかな「美肌トマト鍋」もはずせない。最後はスープをたっぷり吸ったうどんでしめてお腹いっぱいに。
上野公園を見下ろす窓際席ならさらに気分も上昇。グループでワイワイはいわずもがな、一人黙々の静かなる火鍋ワールドも魅力的だ。
JR上野駅から徒歩7分
[土曜・日曜・祝日] 12:00-23:00
⑩ 中国意境菜 白燕(ばいえん)
シェフの技術と実直さが料理に結実
上野駅から稲荷町方面へ徒歩8分。白いビルの2階にある入口を入ると白が基調の清潔感あふれる店内は紫の照明がちょっとムーディー。香港や北京で修行し、グランドハイアット東京や広尾の名店「JASMINE」で経験を積んだシェフが腕をふるう素朴だけれど大切に作り込まれた実直な中華料理を味わる人気店。
夜のコースは4,500円のおまかせコース1択で、季節ごとの料理をオプションで追加できる。点心や穴子の豆鼓炒め、野菜たっぷりの冷麺などが続くが、冒頭で出てくる「蒸し壺スープ」がまず要チェック。飴色に光る透明のスープは、丸鶏や金華ハム、干し貝柱のうまみがギュッと凝縮してどこまでも奥深く上品な味わい。この見た目シンプルな薬膳スープを一口飲んで、シェフのこだわりと矜持を実感する人も多い。
またランチでぜひ食べてほしいのが「魚介スープのワンタン麺」。アサリの出汁とエバミルクのコクが溶け合うクリーミーなスープにもちもちの細麺がからみ、箸が止まらないおいしさだ。流行りの高級食材に頼ることなく、丁寧な仕込みと確かな腕で料理を極めるそのひたむきさに、誰もがファンになれずにはいられないお店だ。
JR上野駅から徒歩8分
パワフルタウン・上野で満腹中華!
東京にはたくさんの外国人が住んでいるが、江戸川区、江東区、新宿区、板橋区などは中国人が多いことで知られる。上野がある台東区はちょうどこれらの地域にはさまれたエリア。アメ横を中心とする上野に中国人街が形成されているのは、こうした土地柄も影響しているかもしれない。くわえてアメ横は中国からの引揚者が開いた闇市がルーツであり、そのあたりの関連性も考えられる。
結果として上野界隈ではおいしい中華料理を食べることに事欠かない。中国人ご用達のディープなお店から日本人も安心の町中華、高級食材を用いたヌーベルシノワまで、ふり幅が大きいことも魅力だ。下町の活気と新時代の施設・サービスが交差する上野は、東京きってのパワフルタウンといえるだろう。みなぎるエネルギーに負けないように、スタミナいっぱいの中華グルメでしっかりと腹ごしらえしよう。