ランチにカレー
神戸三宮地区というのは、阪急、阪神、JR、ポートライナーという鉄道3駅が中心となって第2次大戦後に発展した商業エリアである。当店々舗は三宮のランドマークの一つである「花時計」の北側ビル地下にあり、周辺は南に神戸市役所等オフィス街と北に「さんちか」、センタープラザ等商業エリアが複合した立地している。
港町ということもあり洋食店も数多いこの地区で、リーズナブルで多様なカレーの名店を厳選してご紹介。
①シャンカル
駅前の本場インド
三宮駅から徒歩5分、「シャンカル」は本場インドのコックが腕をふるう本格インド料理店だ。カレーの辛さは甘口 0倍から激辛50倍まで自由に調整でき、激辛マニアから子どもまで納得の味を。
Aセットは、3種類のカレーから1種類と、ナンかライスにパパドと、サラダ、ラッシーがついて880円とお得だ。
注文が入ってから焼くナンは外はパリッと、中はモッチリとしている。カレーにはもちろん、ジューシーなタンドリーチキンにもよく合う。
パパドとは、主にインドで食べられている薄く大判のクラッカー風の食品。豆などの粉から作られており素朴な味わいだが、多くはスパイシーな味付けで食べられる。日本人的にはビールのお供のような感じだが、本場では前菜として扱われる。
カレーはよく煮込まれており、具が溶け込んでどろりとしている。ベジタブルカレーはバターやココナッツミルクのようなこってりとした味がして、コク深く仕上がっている。
②SAVOY
欧風カレーの不死鳥
三宮センタープラザ東館の「Dear Old Curry SAVOY」。神戸らしい雰囲気で、Jazzが流れる小粋なカレー店だ。2019年の10月末で人手不足を理由に一度は閉店してしまったが、常連客や熱烈なファンの後押しもあり、営業時間の短縮を以って同年11月27日に再開し、今日に至る。
肉の種類やトッピングが選べたりする他のカレー専門店とは異なり、メニューはビーフカレーしかないという直球勝負。その他には、生卵とビールだけ。
大きめの白無地の丸皿に、ルー多めに平らに盛られたカレー。黄色いターメリックライスがやや手前にサーブされるのは、たっぷりと盛られたルーが客の方へこぼれるのを防ぐためだとか。
牛スジをベースに、野菜、16種類のスパイス、自家製のブイヨンを形がなくなるまで2日以上煮込み続けた手間暇かけたルー。関西で主流の最初に甘さが際立つタイプではなく、ひと口めからピリッと刺激的だ。ルーにあわせるため、米の産地にまでこだわる。
昔ながらの雰囲気を残すコク深カレーの名店。
[土曜・日曜・祝日]10:30-19:00
③アールティー
カフェからディナーまで気軽に
アールティーの厨房で腕を振るうのは、本場インドで10年以上の経験を積んだベテランインド人コック。 本場で磨き抜かれたその腕で、日本人もインド人にも納得の美味しいインドカレーを提供する。北インドはかつてムガール帝国であった為、カシューナッツやアーモンドとクリームを使った豪奢な宮廷料理が多いのが特徴だ。
大量の玉ねぎを玉ねぎだけの水分で煮込み、カシューナッツを加えてさらに煮つめる。 玉ねぎが柔らかくなったら、それをペースト状にして、その他野菜に各種スパイスと併せてじっくりと煮込んで仕上げる。小麦粉不使用のカレーは混じり気のないコクが楽しめる。
ランチは850円からとお得で、ナンとともにカレーを味わうインド料理の定番スタイルをリーズナブルに楽しめる。インターネットからも注文可能。
[土曜・日曜・祝日]11:00-22:30
④Ayumunya
牛すじの旨味
ポップでアメリカンなガレージのような雰囲気の小洒落た店内装飾が特徴の人気のカレー屋。気さくなマスターが繰り出すカレーライスは650円からと低価格、そしてハイクオリティ。
「定番!あゆむんやカレー」。お店曰く「辛さ控えめフルティーな優しい味のカレー」。赤みがかったルーは比較的さらりとしている。具材は角切りの牛肉、人参、玉葱などがごろっと。辛味そこまで感じず、口に入れた瞬間に少しピリッと来る程度。スパイス香よりフルティーさが強く、果物っぽい酸味と甘味が感じられる。牛肉の肉身と脂身の旨味と甘味もしっかり感じられ、美味しい欧風ビーフカレーといった感じ。
⑤いっとっ亭
パワフルなカレーライス
阪急電車の神戸三宮駅から137メートル、さんプラザの地下にある「いっとっ亭」。実は前述の「SAVOY」で店長を務めた人物が独立したお店だ。一部のカレー通からは、「かつてのSAVOYの味を継いでいるのはむしろいっとっ亭」という声もある名店。
メニューはやはりビーフカレーのみ。ターメリックライスとビーフカレーとの色合いがいい。さらっとしたルー、辛さはあまりなく爽やかな感じのスパイス。食べていくうちにだんだんワインにも似たコクを感じるようになり、最初より美味しく感じる。
おすすめはカツトッピング。ビターなルーがカツの甘味とよく合う。
⑥グリルピラミッドEAST
黒い稲妻
こちらもさんプラザ、SAVOYなど名店ひしめく立地だ。奥に長くカウンター席が14~15席ほど。エジプトっぽい絵やオブジェ、なぜかマイクスタンドも置かれており、一風変わった店構え。
牛すじ黒カレー(アレキサンダー、690円)。ラッキョウと福神漬けの入ったポットも一緒にサーブされる。大きな皿にピラミッド型に盛られた玄米、そしてカレーは“黒”。具材は牛すじと玉ネギ等の野菜が主だが、スジ肉は繊維がほぐれるほど、野菜は形がなくなるほど溶け込んでいる。よってかなりドロドロしている。ひと口目はカラメルのような香ばしさと甘さを感じ、食べ進めていくうちに奥から徐々に辛さがやってくる。パンチのある辛さじゃなくボディブローのようにジワリと効いてくる辛さは、薬膳の風合い。
一緒にサッポロクラッシックをぐびっと。
⑦ガンジ
三宮の最古参カレー?
三宮センタープラザの地下、通称さんちかで、「サヴォイ」よりもはるか前から営業している、超老舗カレー店、「ガンジ Gange」。創業45年という歴史のなかで、70年代神戸の空気感がそのまま現代に残し続ける。
地下の閉塞感を感じさせないためか、壁に鏡が貼られてあり、覗きこむと無限の合わせ鏡に。沢山のパラレルワールドを越えて、自分が70年代にいるのか、なんて感覚になるとか。
カレー専門店を謳いながら、洋食寄りのメニューもたくさんある。そのうえ、オムライスもピラフもカレー味でのオーダーが可能。
カレーのトッピングも牛タン、ハンバーグ、コロッケ、ミンチカツ、トンカツ、牛カツ、エビフライなど豊富だ。
どろりとした粘度高めのカレー。込まれた手のかかっているものでじっくり煮込まれている分、スパイスの喧嘩がなくよくなじんだルーだ。辛さの奥にフルーティーさも感じられる。
⑧コフタ
コクの正体
神戸中央区の「サンパル」は駅から少し離れたショッピングセンター。この辺りまで来ると人気もまばらで、かなり鄙びた雰囲気が漂っている。
カレー以外に定食も扱っているこの「コフタ」は、サンパルができて数年後に開店したとのこと。もう30年以上になる老舗カレー店だ。
「コフタ」といえばインドの肉団子。同じ語源の「キョフテ」はトルコのハンバーグ。
ということもあってかハンバーグカレーはお店の人気メニューだそう。
ドロリとした焦げ茶色で、まさに日本風のカレー。ビーフが一切れ二切れ入っている。ビシッと鼻に抜けるほどの辛さではないが、ピリピリとしている。昨今流行りのスパイスカレーとは真逆の、コッテリ濃厚な欧風。ルーはトロトロというよりドロドロ。一口食べて、すぐに「これは濃くてコクがあるカレー」と分かる。口の中に心地よい辛さが残る。かすかではあるが不思議な酸味と熟成香も感じられる。チーズが隠し味とのこと。
その強い焙煎風味の中に酸味が立っているのも個性。あまりのカレーの濃さに、ハンバーグはまるで一体化したような味わい。
食後はデミタスコーヒーのサービスがうれしい。こちらも濃い味ながら、濃厚カレーの後ではほど良き清涼剤に。
⑨元祖 野菜カレーの店
最強コスパのカツカレー
神戸三宮駅から140メートル、阪急西口商店街にある。地域最安ともいわれるカツカレーはなんと600円。
食べ始めて最初は、野菜の甘さを感じる。食べ進めていくうちに、ピリッとした辛さが追いかけてくる。カツは肉薄・細切りなので食べやすい。
カツの油も、まったく臭みがない。ルーとご飯の量のバランスは、ちょうどいい50-50。テーブルの福神漬けとピクルスとの相性もばっちり。
店名の野菜カレー。かなり大きめな平皿に、男性の拳大のじゃがいもに、めちゃくちゃ太いニンジン、ちょっと煮崩れた茄子が入っている。野菜がここまで主張するカレーはなかなかない。
⑩ピレーネ
洋食屋のさわやかビーフカレー
センタープラザ西館にある昔ながらのカレーショップ。
味としては昔懐かしいカレースタンドのカレールゥ、といった感じのオーソドックスなもの。この道25年以上のシェフが、小麦粉と大量の玉ねぎを炒め、牛肉と野菜を長時間煮込んだボーに、バターで炒めたカレー粉を入れて作るのだそう。さながら昔の喫茶店のカレー。コクもスパイシーさもほどほどのすっきりとした味わいで、安心していただけるカレーライスだ。
カツカレー。豚カツは揚げたてで熱々。サクサクしたパン粉の衣とともに軽やかに。付いていたピクルスはキャベツと人参。漬物の浅漬けっぽい、酸味はホドホドのピクルスだ。
リーズナブルで駅近、普段から通いたい名店だ。