本もランチも、あじわいたっぷりの神保町
国内にはいろいろな「○○の街」がある中で、神保町は日本随一の「本の街」だ。エリアには200を超す大小の本屋があり、芝居関連、アニメファンむけ、古地図系、猫ばかりなど専門性の高い書店が多いことも特徴だ。
老舗からニューフェイスまでさまざまに立ち並ぶ本屋街を散策するのは楽しい。われを忘れて歩くうちにふと気づけばランチタイムだ。神保町のランチ店はこれまた個性派ぞろいで本屋に負けない魅力がある。買ったばかりの本を読んで料理を待つ時間もまた一興。けれどいざ箸を持ったら、しおりをはさんで本を置き、しばしあじわいランチを堪能しよう。
神保町で楽しむ “あじわいランチ” 12選(目次)
店舗 (クリックで詳細) |
特徴や内容 |
① メナムのほとり | 辛党にもいちおしのタイ料理店 |
② うどん 丸香 (まるか) | 香川っ子もうなる讃岐うどん |
③ パンチマハル | 趣味人店主のこだわりカレー |
④ 黒須 | 鳥清湯系のすっきりラーメン |
⑤ 新世界菜館 | 素材が光る上海旬彩料理 |
⑥ さぼうる2 | デカ盛りパスタは味にも納得 |
⑦ みかさ | ただの焼きそばとあなどるなかれ |
⑧ サラファン ロシア | 日本人好みの伝統ロシア料理 |
⑨ ビストロべっぴん舍 お茶の水店 | 小麦不使用のさらさら薬膳カレー |
⑩ 松翁(まつおう) | おいしい蕎麦と天ぷらを堪能 |
⑪ アイコウシャ | 旨みだらけの絶品ハンバーガー |
⑫ お茶の水 大勝軒 | 荻窪~中野~東池袋、そして御茶ノ水 |
① メナムのほとり
辛党にもいちおしのタイ料理店
神保町交差点近くにあるタイ料理好きには有名な人気店。同じエリア内、神保町テラススクエアと丸の内にも店舗がある。
タイ人のシェフが作る料理はどれも本格的ながら日本人の口に合う味付けで食べやすい。ランチタイムは肉の旨みとスパイスが絶妙に交じるガパオライスやペーストから手作りするまろやかかつしっかり辛いカレーやなどが人気。もっと刺激がほしい人は「ゲェーンペッドウンセン」を試してみて。砂肝と春雨入りの褐色のカレーは油断するとせきこむレベル。
ランチはトムヤムクンとライスがおかわり自由、サラダやデザートがセットと至れり尽くせりのサービスもうれしい。
[土曜・日曜・祝日] 11:30-15:00/17:30-22:00
※変更の可能性あり
② うどん 丸香 (まるか)
香川っ子もうなる讃岐うどん
「東京で一番おいしい」との呼び声も高い讃岐うどん専門店。香川の名店で修行した高松出身の店主がふるまう讃岐うどんは、地産の材料を多く取り入れるなど“香川愛” にあふれる逸品だ。
うどんの種類はかけ、つけ、釜玉、月見山などいろいろあるが、初回であれば「かけ」がおすすめ。歯を押し戻すようなこしと、いりこを使った特製出汁の香り高さをじっくりと味わおう。山芋と卵のとろみの中にわさびがピリッと引き立つ「月見山」、赤ワインや自家製和三盆のカラメルの味が奥深い肉山盛りの「肉うどん」など、丸香でしか味わえない個性派メニューがそろいぶみ。季節限定メニューも用意しているので楽しみが広がる。
昼時は長く伸びる行列に尻込みするが、回転は速いのでぜひのれんをくぐって評判の味を試してみて。
[土曜] 11:00-14:30
③ パンチマハル
趣味人店主のこだわりカレー
ロックを愛するギタリストであり、旅人であり、熱烈阪神ファンであるマスターが一人厨房を守るエスニックカレー&ヌードルのお店。ちなみにヌードル系はフォーのカレーがけという他では見ない斬新メニューだ。
カレーはチキンカレー、キーマカレー、やさいカレー、インドカレーの4種類(夜はくわえて鶏ひき肉のドライカレーあり)。インドカレー以外はさらさらのスープ系。チキンやキーマにもくたくたになった野菜がたっぷり入り、スパイシーながらどこかほっこりする味わい。粘度のあるインドカレーは濃厚な旨味が特徴で、柔らかな茄子や骨付き鶏肉が心ほどけるおいしさだ。
こだわりある店主と趣味が合いそう!という人は束の間のピークオフをねらってぜひ話しかけてみて。
水道橋駅から徒歩6分
[土曜] 11:30-15:00
④ 黒須
鳥清湯系のすっきりラーメン
神保町駅から徒歩2分。狭い路地裏の一角にある黒須は、2016年創業と神保町の中では比較的新しいラーメン店。テレビで紹介されたこともあるその味はお墨つきで、隠れ家的立地にもかかわらず連日多くのファンが訪れる。
スープの味は醤油・塩・煮干しの3つに分けられる。とくに人気は「醤油蕎麦」。大山地鶏の丸鶏と水のみを使ったスープはきりりと上品ながら、深みのある後味が特徴。化学調味料不使用と体に優しく、長野産の生揚げ醤油がしっかりとこくと旨みを引き出している。また、麺は北海道小麦100%の全粒粉ストレート麺で、ぷつぷつとした歯触りが心地よく、麺自体のおいしさもしっかり感じられる。
冷やしざる煮干、鰯の冷や汁と宮崎地鶏のポン酢、イベリコ豚の背脂煮干し焼豚麺など、トレンディーなお店らしいユニークな限定メニューも楽しみの一つ。
[水曜・土曜] 11:00-15:00
⑤ 新世界菜館
素材が光る上海旬彩料理
神保町駅A3出口からすぐの場所にある、旬の自然素材をふんだんに取り入れた上海料理を気軽に楽しめる中華店。昭和21年創業の老舗で、お値打ちランチから高級感あふれるディナータイム、大人数の宴会まで、シーンごとに楽しめる使い勝手の良さで多くの常連客に愛されてきた。
名物は上海の指定畜養所から空輸される上海蟹。旨みと甘みがぎゅっと凝縮されたみずみずしい身にとろりとしたミソをたっぷりつけて食べれば天にも昇るおいしさ。9月から2月に出会える時期限定の味覚だ。
もちろん手軽な中華メニューも豊富で、挽肉唐辛子麺、排骨麺、中華風カレーなどがおすすめ。ちょっと贅沢なコース料理を個室でいただくこともできるのでビジネスランチにももってこいだ。
[日曜・祝日] 11:00-21:00
⑥ さぼうる2
デカ盛りパスタは味にも納得
神保町駅裏の路地にたたずむ異空間。入口からしてうっそうとした山小屋風情の「さぼうる」のおとなり、「さぼうる2」は、昭和にタイプスリップしたような喫茶店空間で懐かしの洋食メニューを楽しめるお店。
ランチメニュー表を見るとハンバーグ、ビーフカレー、エビフライ、ポーク生姜焼きの下に書かれたナポリタンとミートソースの文字。サラダ付きで700円と良心的な値段にも感動だが、ここでお知らせしたいのは驚くべき裏メニューの存在。両者ともプラス150円でとんでもないデカ盛りっぷりで登場する。
ナポリタンはトマト感あふれる甘酸っぱさがノスタルジー。ひき肉たっぷりのミートソースはひき肉たっぷりで給食を思い出す味だ。のどごしのよい細めのスパゲッティであんがいあっさり完食できたら、こちらも名物のフレッシュースで爽やかな口直しを。
⑦ みかさ
ただの焼きそばとあなどるなかれ
B級グルメの代表選手、焼きそば。その “聖地” ともいわれるみかさは、全国から焼きそばファンが訪れる人気の焼きそば専門店だ。
焼きそば以外のメニューはない潔さで、ソースか塩か、エビ・イカ入りかそうでないかの4択を提示する。店一番のこだわりは北海道産小麦100%の自家製麺。やや平たい中太ちぢれ麺は、しっかりとこしとのどごしのよさが特徴だ。麺のインパクトに負けないソースは濃い口で味わい深く、威勢よく麺をすするたびに香ばしい香りが鼻と食欲をくすぐる。
シンプルな焼きそばには豚肉や玉子が入っておりこれだけでもボリュームは十分。ここににエビ・イカを追加すれば旨みと食感がアップして一段上の仕上がりに。さらに卓上のしょうがや天かす、からしマヨネーズをトッピングすれば自分だけの絶品焼きそばグルメが完成だ。
⑧ サラファン ロシア
日本人好みの伝統ロシア料理
昭和41年にロシア人の女性が開いた小さなロシア料理専門店。開店当時の伝統レシピを今も受け継ぎ、厨房に立つ2代目店主は学生時代にこの店でアルバイトをしていた戸田雅巳さん。サラリーマン生活を経験したのち、先代との思い出の詰まったこの店に戻ってきた。
肉肉しいタネの中に刻んだ玉ねぎが入った「ロシア式ハンバーグ」やサワークリーム仕立ての白い「ビーフストロガノフ」、お米入りで満腹感を味わえる「ロールキャベツ」など、テレビでも取り上げられた人気メニューをランチで堪能できる。ビーツ由来のピンク色が鮮やかなボルシチやロシア式パンがつくのもうれしいポイントだ。
ちなみに夜は何百種類という豊富なワインをとりそろえ。まだまだあるロシアならではの一品料理とともに味わいたい。
[土曜] 11:30-13:30/18:00-19:30
⑨ ビストロべっぴん舍 お茶の水店
小麦不使用のさらさら薬膳カレー
老舗カレー店とフレンチレストランでの経験を経た店主が、学生時代の思い出の地、神保町に店を出したのが2016年。以来、カレー激戦区の中でもトップクラスの人気を誇り、神田カレーグランプリでは2年連続マイスター賞受賞の実力店。
グルテンフリーでさらりとしたカレーは自家製の香味野菜スープが決め手。8種類の野菜をワインでじっくりと煮込み、まろやかで芳醇な味わいに仕上げる。そこに20種のスパイスが加わり、欧風ながらもきれのある辛さとすっきりとした後味にリピーターが続出だ。
スパイスと玉ねぎで旨みたっぷりの「赤のべっぴん薬膳カリー」、スパイスの複雑な香りが楽しめる「黒のカシミールカリー」、赤ワインで煮込んだ牛スジがとろける「牛スジカシミールカリー」、パクチー好きにはたまらない「濃厚エビカリー」。あなたのお好みはどれ?
※変更の可能性あり
⑩ 松翁(まつおう)
おいしい蕎麦と天ぷらを堪能
神保町駅から徒歩6分。近隣サラリーマンがひいきにするそば屋で、昼時はもちろんに一品料理や日本酒も豊富で居酒屋利用でも定評がある。
たくさんの品数がある中でおすすめは「二色天もり」(2,950円)。二色とは2種類のそばのことで、茨城産そば粉10割の並みそばと、柑橘系や茶そばなど、その日の変わりそばを一度に味わえる。天ぷらは海老、穴子、野菜が2点。揚げ立てを運んできてくれるライブ感もたまらない。
ほかにも「二色もりけんちん汁」「田舎そば」「冷やしなめこそば」「めおともり(うどんとそば)」などメニューはいろいろなのでその日の気分でチョイスしてみて。
[土] 11:30-16:00
⑪ アイコウシャ
旨みだらけの絶品ハンバーガー
昭和レトロなビルの1階に入口を入ると、テーブルクロスのチェックが目を引くアメリカンテイストの空間が広がる。つなぎなし、ビーフ100%のパテを使ったハンバーガーが名物。アボカド、チーズ、ベーコン、サルサなど種類はいろいろで、サイズは100gと150gが選べる。
こんがりと焦げ目をつけたパティは肉感がしっかり残り食べ応え十分。ハードな食感がたのもしく、ぐっと噛むほどに旨みが口の中に広がっていく。バンズの香ばしさも食欲をそそるハンバーガーはナイフ&フォークでおしゃまに食べるのも紙に包んでわんぱくに頬張るのもよし。
日中のみ営業で売り切れ次第店じまい。早めの来店が得策だ。
水道橋駅から徒歩2分
⑫ お茶の水 大勝軒
荻窪~中野~東池袋、そして御茶ノ水
東池袋で惜しまれつつものれんを下ろした「大勝軒」の味を受け継ぐ、つけ麺の名店。東池袋大勝軒に惚れ込んで通いつめた青年は、一度は就職するもその味を忘れられずに東池袋大勝軒の門を叩く。伝統のつけ麺・ラーメンの味を一から学び受けたのち、平成18年にお茶の水 大勝軒を開店。全国100を超えるのれん分け店の中で、どこよりも元祖の味を忠実に守る店として、東池袋時代のファンも押しかける人気店となった。
看板の「特製もり」は、和と中華が融合した独特の甘酸っぱがくせになる醤油ダレが自慢。ほのかに卵が香る手切りのソフト麵によく絡む。寒い日にぴったりの「あつもり」や昔ながらの和風出汁がおいしい「中華そば」、さらに東池袋の前身、中野大勝軒の「復刻版カレーライス」など。古くて新しい大勝軒の味をぜひその舌で確かめてみて。
御茶ノ水駅から徒歩6分
来るたびの楽しみ、神保町ランチ
神保町であじわい深いランチを楽しめる12の名店をご紹介した。このエリアは昔から学生やサラリーマンが多い場所がら、旨い・安い・早いをかなえる理想のランチ店が多い。しかもどの店も時代がはぐくむ伝統や店主のこだわりに彩られ、他にはない魅力を発している。本屋とはちがいランチのお店は一度にたくさんめぐることはできないので、何度となく足を運んで、そのあじわいを余すところなく堪能したい。