カレーファンが “巡礼” する街、神保町
「カレーの聖地」といわれる神保町には、400店を超すカレー店(またはカレーを看板にすえるお店)があるという。なぜ神保町はこんなにもカレー街化したのだろう? 古本の街としても有名な神保町では、本を読みながら片手間に食べられるメニューとしてカレーが人気になったという説もあるが、あくまでも仮説の範疇だ。
いずれにしても、こんなにたくさんの、しかもさまざまな種類のカレーを提供する店が一挙に集結する街は、日本の、いや世界のどこを探しても見当たらない。そんな全国のカレーファンが “巡礼”する街、 神保町で、見逃し・食べ逃し厳禁の10のお店をお届けする。
神保町で絶対はずせないカレー店 10選(目次)
店舗 (クリックで詳細) |
特徴や内容 |
① ボンディ | 神保町といえば! 殿堂入り欧風カレー |
② エチオピア 本店 | 食後感すっきりの薬膳カレー |
③ まんてん | 見た目や味、価格までもがノスタルジック |
④ カーマ | 青春が導いたさらさら南インドカレー |
⑤ 共栄堂 | 異国情緒と郷愁が交わるスマトラカレー |
⑥ マンダラ | 神田カレーグランプリ王者の実力 |
⑦ ガヴィアル | 気品の香る王道欧風カレー |
⑧ 鴻(オオドリー) 神田駿河台店 | 神保町に2店舗展開のスープカレー店 |
⑨ チャントーヤ ココナッツカリー | どんなトッピングも不思議にマッチ |
⑩ MAJI CURRY(マジカレー) | カレー大好きの少年が20年越しに叶えた夢 |
① ボンディ
神保町といえば! 殿堂入り欧風カレー
1973年創業で、カレー激戦区・神保町のパイオニア的存在。銀の器になみなみと注がれた香り高い欧風カレーソースは、野菜の甘みとコク、スパイシーな辛みのめくるめく三重奏を堪能できる。
この秘伝のカレーソースをベースに、牛肉を柔らかくなるまで一緒に煮込んだビーフカレー、下味をつけて一日寝かせたもも肉を香ばしく焼いたチキンカレーなど、オリジナルのメニューを提供する。
カレーだけでなくライスにもこだわる。使っているのはブイヨンスープとバター、ローリエと一緒に炊き上げた特製ライス。ほどよい塩気とまろやかさを加味するチーズ オン ザ ライスもボンディ発のアイデアだ。また。神保町の名店でよく見る食前のまるごとのじゃがいももボンディが先駆け。店の人に聞くと、バターをつけて「じゃがばた」にするのも、カレーに混ぜて一緒に食べるのもどちらも正解ということだ。
東京都千代田区神田神保町2-3 神田古書センター 2F
② エチオピア 本店
食後感すっきりの薬膳カレー
いまや高田馬場や秋葉原に支店をもつが、すべてのはじまりはここ、神保町。明大通りをくだる途中にある店の間口は小さいが、2階もあるうえにみんなぱっぱと食べるので回転は速い。
神保町のカレーの中でもとくに薬膳の色彩が濃いカレーで、じっさい調合している12種類のスパイスは漢方薬にも使われている。野菜が大量に溶け込んでいるためにしっかりとコクがあるが、食後感がすっきりしなのは薬膳のおかげかもしれない。もっともスパイシーな辛さはなかなかのもので、70倍までのチャレンジができるから辛党はぜひ応戦を。
ごろっとチキンがインパクト大な看板のチキンカレー、デトックス効果も期待できそうな野菜カレー、奥深い味わいがくせになるビーフカレーなど。その日の気分でチョイスして。
小川町駅から徒歩4分
御茶ノ水駅から徒歩5分
[日曜・祝日] 11:00-21:00
③ まんてん
見た目や味、価格までもがノスタルジック
昭和のまま時間が止まったかのような店構え。店の中も然りで年季の入ったコの字型のカウンターに、学生や勤め人が無心になって目の前のカレーに食らいついている。
並カレー、カツカレー、しゅうまいカレー、コロッケカレー、ウィンナーカレー、ジャンボカレー、大盛りカレーのいずれかを注文。どれも500円~650円と価格にまでノスタルジーがただよう。しゅうまいといっても揚げものなのでボリュームについては心づもりを。食べ切る自信がない場合はごはん少な目と伝えておこう。
辛みはなくひき肉たっぷりの粘度高めなルーは懐かしいような他では味わったことのないような。しかしふとしたときに衝動的に食べたくなる摩訶不思議なカレー、なのだ。
水道橋駅より徒歩7分
[土曜] 11:00-16:00
④ カーマ
青春が導いたさらさら南インドカレー
錦華通り沿いにある家庭的な雰囲気が魅力のインドカレー専門店。メディアにも幾度となく登場しており、新旧こもごもの常連さんが通う。
店主の大野弘さんがカレーに出会ったのは20代のとき。単身渡米して働きながら旅をし、その後移り澄んだカナダのアパートで、同居人が作るスープのようにさらさらとしたインドカレーに感動した。帰国して奥さんと開いたカレー店は、欧風カレーが主流の当時、はじめのうちは受け入れられなかったという。しかし評判が評判を呼び、今では神保町を代表する人気店となった。
こだわりのカレーは3種類。南インド風のヘルシーなチキンカレー、チキンと野菜をダブルで楽しめるやさいカレー、たっぷりのひき肉で辛さ控えめのキーマカレー。さらなる高みを目指して今でも人知れず味の調整をしているのだとか。店主の飽くなき挑戦は続く。
※月曜・祝日は昼営業のみ
⑤ 共栄堂
異国情緒と郷愁が交わるスマトラカレー
大正13年創業の老舗中の老舗。明治末に東南アジアを遊学した伊藤友治郎氏が伝えたスマトラカレーを今に受け継ぐ。
こげ茶色に艶めくカレーソースは水を一切使わないが、野菜から出る旨みたっぷりの水分でさらりとした口あたり。そこに1時間かけて炒めた20種類の香辛料がさわやかな辛みと深みのあるほろ苦さををくわえている。新潟の契約農家から仕入れるこしがありつつふっくらと炊き上げられた米との相性も計算済みだ。
ぷりぷり食感がたまらないえびカレーや柔らかなタンカレーもおすすめ。つけあわせのポタージュスープで口休めしつつ、神保町カレー伝統の味をじっくりと堪能しよう。
東京都千代田区神田神保町1-6 神保町サンビルディング B1
⑥ マンダラ
神田カレーグランプリ優勝の実力
北インド出身のシェフが本場のインドカレーをふるまう「マンダラ」は、神田カレーグランプリで見事優勝の経験をもつメディアにもひっぱりだこの人気店だ。
たっぷりの香辛料を香り高く炒めたカレーはしっかりスパイシー。一方でどこかホッとするクリーミーでまろやかな味わいも特徴だ。一番人気は定番の「チキンバターマサラ」。スパイスの風味とトマトの酸味があとをひく。ほくほくした食感が楽しい「豆カレー」や、素朴な甘みの「ベジタブルカレー」もいちおし。カレーの種類により香辛料を使い分けており、違った味わいを楽しめるのもポイントだ。
ランチは2種のカレーを選べてお得感大。夜はタンドールチキンやシークカバブなどサイドメニューが豊富でお酒も楽しめる。
[月曜-金曜] 11:00-15:00/17:00-23:00
[土曜・日曜・祝日] 11:00-15:00/17:00-22:00
⑦ ガヴィアル
気品の香る王道欧風カレー
1982年創業の欧風カレー専門店。店内はクラシックが流れる落ち着いた雰囲気で、女性一人での来店やビジネスランチでも使いやすい。
創業当時から継ぎ足す秘伝のカレーソースは、オリジナルのペーストが味の決め手。一日かけて茹でた大量の玉ねぎに、28種類の香辛料や香味野菜を加えてバターで炒める。これがガヴィアルのカレーならではの独特のコクと旨みを引き出している。
柔らかく煮込んだ和牛や国産豚、旨みを閉じ込めながらソテーしたエビやホタテ、皮目を香ばしく焼きあげたチキンなど、トッピングの具材へのこだわりも一級。伝統の味とシェフのプライドが光る王道欧風カレー、ぜひお試しあれ。
⑧ 鴻(オオドリー) 神田駿河台店
神保町に2店舗展開のスープカレー専門店
映画に出てくるような大正ロマン風情の店内には、著名時の色紙がずらり。ファンが足繁く通うそのお目当てはこだわりのスープカレーだ。
スパイシーな辛さに痺れるスープは、奥行のある旨みと甘みが同居する。豚骨がベースの黒スープとチキンがベースの赤スープのいずれかをチョイス。具材も選べ、店のおすすめは黒のハンバーグカレーと赤のチキンカレー。国産牛肉を手ごねしたジューシーなハンバーグとほろほろとくずれる鶏肉がスープをたっぷり吸って至福のおいしさだ。
辛さは4まで調整可能で1でも中辛程度。自分好みにカスタマイズできるのが楽しい。カレーは野菜や玉子などデフォルトの具材が充実、ごはんお替わり無料なのでおなかいっぱい食べられることもうれしい。
⑨ チャントーヤ ココナッツカリー
どんなトッピングも不思議にマッチ
老舗ひしめく神保町にすい星のごとく現れたカレー界のニューフェイス。日本人好みに仕上げた優しい味わいのココナッツカリーは、アジア料理が苦手という人さえもファンに変えてしまう不思議な魅力の一皿だ。
特徴的なのはバラエティ豊かな具材とその掛け合わせ。定番の「チャントーヤカリー」はチキン、なす、たけのこが入るが、そのほか豆腐、ほうれん草、ベーコン、きくらげ、エビ、オクラ、玉子、トロすじなど、ちょっと他では見ないアイテムがせいぞろいする。食べてみるとどの具材もびっくりするほどココナッツカリーと相性がいい。
「都会の中で少しでもホッとできる時間を」と店の優しさも溶け込むような唯一無二のココナッツカリー。食べたそばから虜になることうけあい。
新御茶ノ水駅から徒歩3分
神保町駅から徒歩7分
[土曜・日曜・祝日] 11:00-21:00
⑩ MAJI CURRY(マジカレー)
カレー好き少年が20年越しに叶えた夢
子どもの頃からのカレー好きが高じてみずからカレーの聖地・神保町に店をオープン。そこにこぎつけるまでにオーナーが歩んだ道のりは平坦ではなかった。ほんもののおいしさを見つけたくて世界各地を巡り、異国のスパイシーなカレーと日本ならではの煮込み系のカレー、両方の魅力を再確認して帰国。2つを融合したオリジナルカレーの開発を試みるも思うようにいかず。三ツ星レストランを渡り歩き、フレンチの名シェフから技を享受して試行錯誤の末に作りあげたのが今や行列必至の人気を誇る「マジカレー」だ。
カレーへの愛情は今も薄れることなく、100時間の手間ひまをかけて大切に作る。トッピングはカツがてっぱんだがハンバーグも捨てがたいし、牛しゃぶや野菜もはずせない。2018年神田カレーグランプリ優勝にまでのぼりつめたカレー好き少年が夢みた味を、ぜひ自分の舌で確かめて。
御茶ノ水駅から徒歩5分
[日曜・祝日] 11:00-16:00/17:00-21:00
自分だけの名店を探しに行こう
日本人はカレーが大好きな国民で、どの街にもたいていカレー屋さんがある。種類もさまざまで、なじみ深い欧風カレーやスパイス香るインドカレー、エキゾチックなタイカレーやお蕎麦屋さんで食べるだしのきいたカレー丼など。
そして「カレーのメッカ」といわれる街は案外いろいろあるのだが、その中でも神保町はやはり別格の存在だ。恒例の神田カレーグランプリに参加するのもひとつだが、自分のペースで神保町にあまたあるカレー店を食べ歩いてみるのもいいだろう。カレーの好みは人それぞれ。自分だけの名店がきっと見つかるにちがいない。