築地の味を、豊洲市場で楽しめる
83年にわたる歴史に築地市場が幕を下ろしたのが2018年。同年10月、企画立案から14年の歳月を経て、豊洲市場がスタートした。
施設の老朽化や品質管理・衛生面など、築地時代のさまざまな課題をクリアした豊洲市場は、新しい東京の主要市場にふさわしい近代的な施設となっている。
場内は、「管理施設棟」「青果棟」「水産仲卸売場棟」「水産卸売場棟」の4つの建物に分かれ、それぞれ連絡通路で自由に行き来が可能だ。水産卸売場棟以外の建物内には飲食エリアがあり、築地市場内にあった39の食事処がそっくり移転してきている。築地時代のひしめきあうような雑多感はないものの、一流の味やサービスは当時のままだ。
この記事では、いずれもレベルが高い39店の中から、とくに口コミ評価の高い人気店16店をピックアップした。豊洲市場で働く人たちが日々通うお店では、地に足のついた “現場感” を感じられることも魅力だ。
もっとも、ランチといっても14時には閉まってしまうところが多いし、行列覚悟のお店では午前中早い時間に売り切れてしまう場合も。できるかぎり早めの来店が得策だ。
豊洲市場人気のランチ店 16選(目次)
店舗 (クリックで詳細) |
エリア | 特徴や内容 |
① 大和寿司(だいわすし) | 青果棟 | 大トロのとろける味わいに悶絶 |
② とんかつ八千代 | 管理施設棟 | ふわふわアジフライは一食の価値あり |
③ 印度カレー 中栄 | 水産仲卸売場棟 | 100年の歴史を誇る老舗のインドカレー |
④ やじ満(やじまん) | 管理施設棟 | 牡蠣ラーメンは染みわたるおいしさ |
⑤ 天房(てんふさ) | 青果棟 | 豪快な天丼は豊洲市場の “力めし” |
⑥ 寿司大(すしだい) | 水産仲卸売場棟 | 行列の先にある一流の味 |
⑦ 鳥めし 鳥藤(とりとう) | 水産仲卸売場棟 | 名物の親子丼、味の決め手はスープにあり |
⑧ 仲家(なかや) | 水産仲卸売場棟 | 自慢の海鮮丼は味も値段も優等生! |
⑨ 禄明軒(ろくめいけん) | 水産仲卸売場棟 | コスパ抜群の本格洋食メニュー |
⑩ 磯野家(磯寿司) | 水産仲卸売場棟 | マグロ好きは食べ逃し厳禁 |
⑪ ふぢの | 水産仲卸売場棟 | 辛みがくせになる酸辣麺はリピート必至 |
⑫ そば処 豊洲 富士見屋 | 青果棟 | 市場の人と肩を並べてそばをすする |
⑬ 寿司処 やまざき | 管理施設棟 | カウンター越しのパフォーマンスも一興 |
⑭ 魚河岸トミーナ 豊洲市場店 | 施設管理棟 | 豊洲市場で唯一のイタリアン |
⑮ とんかつ小田保(おだやす) | 水産仲卸売場棟 | 豊洲自慢の海の幸をフライやバター焼きで |
⑯ 魚がし料理 粋のや | 水産仲卸売場棟 | おなじみの魚定食でホッと一息 |
① 大和寿司(だいわすし)
大トロのとろける味わいに悶絶
青果棟にある大和寿司は、築地時代のファンをはじめ外国人でもにぎわう人気店。行列必至だが店内は比較的広めのつくりなので回転は速い。
経験豊富な仲卸と仕入れ担当が確かな目利きで仕入れたネタは言うまでもなく鮮度抜群。その醍醐味を存分に楽しめるおまかせコースはマグロ大トロ、ボタンエビ、玉子、スミイカ、根室のバフンウニ、鹿児島のカンパチなどその日のおすすめ9品に味噌汁がついて4,400円。脂ののった大トロのとろけるような味わいに場内ならではの至福を感じる。
旬の素材も常にそろえているから気になるネタは追加注文でしっかり堪能。苦手なネタがあれば考慮してくれるやさしさもうれしい。とくに土曜は11時を過ぎるとネタがきれてくるということで、限りなく朝に近いランチで来店するのが賢明だ。
② とんかつ八千代
ふわふわアジフライは一食の価値あり
香ばしくきつね色に揚がった衣の中で新鮮なネタがみずみずしく光る。絶品フライの数々にむかしからの常連客が集うお店。
「世界一おいしいのでは!?」と評判の絶えないアジフライはやさしさすら感じるふわっふわの食感。小気味よい衣のカリカリ感とあいまって口の中で軽やかにほどける。これにプリプリとした弾力がたまらないエビフライと、絶妙な火加減で甘やかなレア感が信条のホタテフライをあわせ「C定食」1,600円はサービス定食として絶大な人気だ。
また、フライとならぶ名物メニューが火・木・土曜限定の「チャーシューエッグ定食」。自家製の甘ダレがたっぷりと染みたぶあついチャーシューは食べごたえ満点。とろとろの卵とからめて口いっぱいにほおばれば、思わず笑いがこみ上げてくるようなおいしさだ。
ちなみにプラス100円でかけてくれるカレーがまたスパイシーでやみつきの味。小さなのれんをくぐった築地時代とは店の雰囲気こそ変わったが、味と下町人情あふれる接客はそのままだ。
③ 印度カレー 中栄
100年の歴史を誇る老舗のインドカレー
大正元年に日本橋で創業。1935年の築地市場開設にともない築地市場に移転、その後豊洲市場へ。東京魚河岸の歴史とともに歩んできた味わい深いインドカレーを召し上がれ。
おすすめは「印度カレー」、「ビーフカレー」、「ハヤシライス」の3品。このうち2品を選べる「あいがけ」をたのむ人が多い。印度カレーは香り高いスパイスのほどよい辛みがクセになる定番のポークカレー。ビーフカレーはやや甘口で子どもでも食べやすく、ハヤシライスはトマトの酸味が上品な中にもどこか懐かしい味わいだ。
また、魚介の旨みが溶け込んだ「築地魚河岸シーフードカレー」や食べごたえ十分の「炙りチャーシューカレー」もファンが多い一皿。名物の山盛り千切りキャベツをカレーに浸しつつ、大正のハイカラグルメを令和の豊洲で堪能しよう。
④ やじ満(やじま)
牡蠣ラーメンは染みわたるおいしさ
市場で働く人も訪れた人も、パパっと食べてパパっと帰る。そんな流儀が自然となじむ「やじ満」は、昔なつかしの東京ラーメンや種類豊富な中華メニューを楽しめる創業70年を超える老舗店だ。三代目となる店主が、伝統の味と料理人の熱い想いを受け継いでいる。
ボリューミーなシャーシューととろけるワンタン、こしのある麺が三位一体となった「特製チャーシューワンタン麺」は市場の名物。これにくわえて冬季は時期限定の「牡蠣ラーメン」が好評だ。塩味の白濁スープは牡蠣のエキスがたっぷり溶け込んで奥深い味わい。新鮮そのものの牡蠣はプリプリと弾けるような食感で口の中がしあわせ色に染まる。
キムチ炒飯、麻婆豆腐、ジャンボ焼売にニラ玉丼など、人気アイテムは数多くあるので、実食のうえぜひ自分のお気に入りを見つけてほしい。
⑤ 天房(てんふさ)
豪快な天丼は豊洲市場の “力めし”
豊洲市場内で働く人が朝食をとる姿もよく見られるてんぷら専門店「天房」。大豆油とごま油をブレンドした特製の油で揚げられたてんぷらはからっと香ばしく、サクサクと耳に心地よい口触りも楽しい。
いちおしは大きなネタがダイナミックに丼からはみ出す「大えびあなご天丼」。こっくりとしたタレをたっぷりとかければ最後のごはん一粒まで残したくない。また「本日の天丼」はその日の仕入れによって変わるネタも楽しみ。ホタテ、キス、ヤリイカなど一期一会の新鮮な食材をじっくりと味わおう。
くわえて最近ではの豊洲移転後の新メニュー「まぐろ刺身定食」も要チェック。新鮮なまぐろの刺身と名物のてんぷらを一緒に食べられるということで人気アイテムの仲間入りを果たしている。
場内の人が丼ものを食べるときには、山椒をたっぷりふりかける。こうすると朝からあっさりと食べられるのだとか。豊洲市場の活気を支える “力めし” で午後へのパワーチャージは完璧。
⑥ 寿司大(すしだい)
行列の先にある珠玉の握り
“豊洲でもっとも行列ができる店” との異名をもつ「寿司大」。大げさではなく2~3時間の待ち時間はざらで、早いときは10時台に受付が終わってしまうこともある(開店は朝5時半)。早めの来店が肝心だ。
人気のおまかせセットは、おすすめのにぎり10カンにお好みのにぎり1カンと巻物1本、味噌汁がついて4,800円。北海道の北寄貝、佐渡ヶ島のブリの醤油漬け、東京湾のタチウオ、銚子の金目鯛昆布締めなど。「最高」でなければ仕入れないという厳しい目利きをクリアして皿に並んだ珠玉のネタは、江戸前ならではのほどよい味付けも特徴だ。赤身の醤油漬けや穴子など、ふだん食べなれているネタほどに一流の味を確認できる。
忙しい江戸っ子の小腹を満たす江戸前寿司だが、寿司大では急ぐ必要はない。陽気な板前との会話も楽しみながら、極上の1カンを心ゆくまで堪能しよう。
⑦ 鳥めし 鳥藤(とりとう)
名物の親子丼、味の決め手はスープにあり
明治40年創業の鶏肉専門卸「鳥藤」が営む鶏料理のお店。明治、築地エリアの3店舗に続き、2018年に豊洲市場内にオープンした。
鶏一筋のこだわりがあらわれるのは早朝から8時間炊き続ける鶏だし白湯スープ。これをベースとした割り下で作る「親子丼」が店の看板メニューだ。国産地鶏の弾力と割り下のやさしいコク、半熟卵の柔らかなとろみがあわされば、二度でも三度でもリピートしたくなるおいしさ。
また、甘辛タレにたっぷりつけこんだとりそぼろ・焼き鳥・煮卵がのった「とりめし」や、ジューシーさがたまらない「竜田揚げ定食」、親子煮とカレーを一度に楽しめる「親子カレー」もランチタイムにぴったりのメニュー。
豊洲市場でおいしい鶏料理を食べるなら見逃し厳禁のお店。
⑧ 仲家(なかや)
自慢の海鮮丼は味も値段も優等生!
豊洲市場の行列店といえば「寿司大」が有名だが、ここ「仲屋」の並びっぷりもすごい。自慢は種類豊富な海鮮丼。海鮮系は豊洲市場価格だと3,000円あたりが平均だが、仲屋の海鮮丼はその大半が1,000円台、2,000円台というコスパの良さも人気の秘訣。
もっともお値打ちの「なかおち丼」(1,200円)は値段に負けずボリューミー。濃厚な味でも脂っぽさがなくてあっさりと食べられる赤身が何重にもかさなり、しっかりおなかが満たされる。ほかにも「まぐろ4種丼」、「うに・いくら・なかおち丼」、「とろ・うに・なかおち丼」など選択肢はいろいろなのでお好きな海鮮をチョイスして。
また、海鮮丼だけでなく焼き魚やエビフライ、季節限定のカキフライといった定食系も評価が高い。市場の活きを存分に感じる “魚河岸めし”を手軽に楽しめる大満足のお店。
⑨ 禄明軒(ろくめいけん)
コスパ抜群の本格洋食メニュー
余計な装飾のないこざっぱりとした店内に入ると、市場関係者とおぼしき人たちが我が家のようにくつろいだ様子で食事を楽しんでいる。豊洲市場内でも数少ない洋食を食べられるお店で、どの品も800円以下という驚くべき価格が、気の置けないふだんづかいをさらに後押しする。
けれど人々が足繁く通う理由は価格だけではない。高級店顔負けの本格的な味をぜひためしてほしい。とくにおすすめは「カキバター焼きライス」。香ばしくソテーされた大ぶりの牡蠣を噛みしめると海の香りと醤油バターのまろやかさが口の中であいまって頬が落ちるようなおいしさだ。
また、箸で持ち上げるとずしりと重いメンチカツやふんわりと柔らかなアジフライ、甘辛タレがあとをひく豚の生姜焼きなど、一見ふつうのメニューであっても、いずれも食べてみればプロのこだわりとプライドが感じられる。
厨房を一人で切り盛りするシェフにも思わずエールを送りたくなるお店。
⑩ 磯野家(磯寿司)
マグロ好きは食べ逃し厳禁
「磯寿司」でいちばんの自慢はマグロ。店主の知人が営むマグロ問屋から、最高級のマグロをまるまる一本買いしている。そのマグロの希少部位「脳天」を炙って塩でいただく握りや、薔薇色一色の「マグロづくしにぎりセット」、「マグロづくし丼」などが看板メニューで、マグロ好きなら一度は訪れたい。
ほかの魚介もすべて市場で毎朝買い付けている。なかには苦手な人がいるウニも、磯寿司のウニならむしろ好きになって帰る人もいるくらい。その新鮮さは桁違いだ。
シャリへのこだわりも強く、15年以上前から新潟県魚沼市の農家からコシヒカリを直接仕入れている。新米と古米のブレンドを固めに炊いて、さらに握りのサイズは大きめだから、おなかいっぱいになれるのもうれしい。
子ども向けのセットやハーフサイズもあるので状況ごとに利用できる。酒類のラインナップも豊富でめずらしい地酒や焼酎もおいているから、のん兵衛にもおすすめだ。
⑪ ふぢの
辛みがくせになる酸辣麺はリピート必至
築地時代から市場で汗を流す人々のおなかを満たしてきた中華食堂「ふぢの」。 ひき肉みっしりでずっしりと重い「ジャンボシューマイ」」をビールとともにいただくのも至福だが、ランチタイムにおすすめなのは麺ものの数々。
あっさりとした醤油ベースのスープに中細麺が懐かし風情の「ラーメン」をはじめ、ほろほろとくずれる自家製豚バラチャーシュー5枚をのせた「チャーシューメン」、さわやかな酸味のあとから汗にじむ辛みが追いかける「酸辣麺(スーラーメン)」など。もうもうと立ちのぼる湯気の中からすくい上げた麺をはふはふとほおばるお客さんたちは、食べ終える頃には一様に満たされた表情を浮かべている。
ワンタン、中華丼、炒飯、半チャンラーメン(チャーハン半個つき)など町中華風情のメニューもラインナップ。ほとんどが1,000円以下という庶民価格も、長く通い続けたくなる理由の一つだ。
⑫ そば処 富士見屋
市場の人と肩を並べてそばをすする
市場見物のあいまに手軽にささっとごはん食事をとりたい、そんな人にぴったりなのがこちらのお店。築地時代から代表的な市場食のひとつで、忙しい市場の人たちに混じって食べる “現場感” も魅力だ。
ささっと食べて帰るはずがあまりの品数の多さにしばし頭を悩ませること必至。そんな人におすすめしたいこの店の看板メニューは「天丼セット」。せいろと一緒に楽しめる小天丼はこってりとしたタレをじっくり吸い込んだ季節の野菜や海老の天ぷらにごはんがどんどんすすむ。
また、肉感あふれる大きな団子が5個も入った「鴨団子そば」やとろみ加減が懐かしい「カレー南蛮」も人気。平均予算高めの場内グルメにあって1,000円以下のメニューが多いこともうれしいポイントだ。
メニューにないトッピングをかくも自然な雰囲気でたのむ人がいればそれは常連中の常連さん。長年市場関係者を支えてきた富士見屋の安定感はゆらぐことがない。
⑬ 寿司処 やまざき
カウンター越しのパフォーマンスも一興
90年以上の歴史が培ってきた技術と人脈、たしかな目利きによりつねに最高品質のネタだけを追求して究極の一握りを提供してきた。一方で仕入れによる価格の変動は最小限にとどめ、財布へのやさしさにも気を配る。そんなホスピタリティが身を結び、豊洲移転後の今も場内屈指の人気店として名をはせている。
おまかせ(6,000円)は巻物をふくめ11品をふるまう。活きたままの車海老や北寄貝が板のうえで元気に跳ねるところを目の前で炙り焼きにするパフォーマンスはやまざきならではの醍醐味だ。むしろそういうのが苦手…という人のためにはボタンエビを用意するなど細やかな気遣いもさすがは名店。また、最近では握りのみならず刺身といくらご飯を一度に楽しめる「ちらし寿司」なども人気だ。
その日の仕入れによってメニューに載らないネタに会えることもしばしば。「今日はなにを食べられるかな?」そんなワクワクした気持ちにさせてくれる「やまざき」は、ファンが多いことも納得だ。
⑭ 魚河岸トミーナ 豊洲市場店
豊洲市場で唯一のイタリアン
築地時代、小さな店内で隣客とひしめき合いながらあつあつのピザをほおばる雰囲気はイタリアの街中にあるローカル食堂のようだった。その頃に比べると豊洲市場内のお店は広く明るく、各段にスタイリッシュになった。けれどその味は変わることなく、むかしからの常連はもちろん、新規のファンも多く集めている。
こくのあるミートソースが自慢の「ボロ二ェーゼ」やプチプチ食感が楽しい「たらこのバターあえ」といった定番のほか、季節を感じる場内ならではの限定メニューも要チェック。噛みしめるたびに旨があふれるプリプリの牡蠣を使ったパスタはトマト、クリーム、オイスターの3種類のソースから選んで。また、春先に出会える「ワタリガニのクリームパスタ」は葱の甘みがしみこんだまろやかなソースに天然の甘さをしっかり蓄えたズワイガニが贅沢にトッピングされる。
豊洲市場で本格イタリアンを食べられる貴重な一軒。
⑮ とんかつ小田保(おだやす)
豊洲自慢の海の幸をフライやバター焼きで
カフェを思わせるようなおしゃれな店内では、大人も子どももおいしそうに目の前の食事を楽しんでいる。常連多数の洋食屋の老舗で、豊洲ならではの新鮮な魚介をフライやバター焼きで堪能できるお店。好きなアイテムを選べば、ごはんと味噌汁がセットの定食にできる。
10月~4月に出会える「牡蠣ミックス定食」は、サクサクの牡蠣フライとこくたぷりの牡蠣バターを一皿で味わえる。堂々たる牡蠣の大きさに驚きつつ、思い切り大口を開けてかぶりつくと濃厚かつクリーミーな美味が口いっぱいに広がる。
甘みのあるふくらとした海老と半熟卵がとけあう「海老カツ天丼」はレギュラーメニューの中でもいちおしの一品。舌平目バター焼き定食、さしみ定食、穴子フライ定食などの魚介系はもちろんはずせないものの、それ以外も高レベル。特製ダレをたっぷりかけた厚切りチャーシューととろとろ玉子が黄金コンビの「チャーシューエッグ」は何度でも通いたくなるようなおいしさだ。
⑯ 魚がし料理 粋のや(いきのや)
おなじみの魚定食でホッと一息
築地市場の老舗「和食 かとう」が豊洲市場で店名もあらたにリニューアル。しかし訪れるたびに常連をうならせた上級でどこか懐かしい和食の味は当時から一寸も変わらない。
ここの名物は日本人のソウルフードともいえる魚定食。「金目の煮付け御膳」、「銀だらの西京焼き御膳」、「ぶりの塩焼き御膳」などなじみあるメニューはどれも料理人の丁寧な手仕事が伝わる奥深い味わい。場内で働く人たちの朝ごはんとしてもよく食べられている。
もちろん刺身のネタも新鮮そのもの。ひのき板に並んだ鮮魚5点にごはんと味噌汁、香の物がつく「桜御膳」や気前のいい厚切り加減がお得感大の各種海鮮丼もランチタイムにぴったりだ。
豊洲市場見物の人ごみにちょっと疲れた、そんなときにホッと一息つけるお店。
豊洲市場で、歴史を伝えるグルメに出会う
東京の魚河岸の歴史は、江戸時代に遡る。徳川家康の呼びかけで大阪から集まった漁師たちが、日本橋界隈で商いをはじめたことがはじまりだ。その後、昭和10年に開業した築地魚市場は、80年以上にわたり東京の食生活を支え続けた。その歴史を受け継いだ豊洲市場は、新しい東京の基幹市場として利便性と公衆性を兼ね備え、一般の人たちも気軽に楽しめる施設となっている。築地時代のごった返すような粗野な賑やかさはそこにはもうない。けれど、当時の記憶をとどめる名店の味ともてなしの心は今なお健在だ。市場を支える人々とともに歴史を歩んだ至高の一皿を求めて、新時代の東京魚河岸にいざ、出陣。