粋の町
観光名所として知られる浅草は、粋な食文化が根づいた名店揃いの街でもある。
創業100年を越し、世代を越えて愛され続ける老舗の味は、誰の舌にも間違いない。
この記事では、浅草周辺で高評価を得るランチの名店を15、厳選してご紹介する。
①ナベノ-イズム
フレンチと江戸食文化の融合
隅田川のほとりに2016年にオープン。白い石造りのビルは高級感が溢れている。エレガントな内観にリバービュー店内は、テラス席まで完備されているミシュラン2つ星のフランス料理店だ。
日本人の舌に馴染みやすい江戸食文化とフランス料理を融合させた新しい一皿で訪れる人全てを魅了する。
”雷おこし”や”最中の皮”などご当地感溢れる素材や、両国江戸蕎麦『ほそ川』の蕎麦粉を、ソース・エミュリュッショネの技法で炊き上げた「そばがき」など、日本人の舌に馴染み深い食材とフランス料理を調和させた、新たな一皿を提案。
ランチコースは8000円から提供している。
[日曜]12:00-15:00、18:00-21:30
②龍圓
日常に 創作中華の彩りを
浅草駅から徒歩1分。創業20年、今なお進化し続ける「龍圓」は、外観・内観ともにシンプルな造りでとても高級感に溢れている中華料理店だ。白を基調としたシンプルで洗練された内観はデートや記念日にもピッタリだ。
様々なジャンルを融合した、個性あふれる創作中華を提供しており、ムース状にした豆腐をピータンに乗せた『エスプーマのピータン豆腐』は五感で愉しめるおすすめの逸品だ。
フレンチの技法を用いた「よだれ鶏」など、四川料理をマイルドにアレンジして提供している。
食材にはとてもこだわっており、シェフ自ら現地へ出向き見極めている。
[日曜・祝日]12:00-13:15、18:00-20:30
③ボナ・フェスタ
マットレスでまったりカフェタイム
白い壁に黒い大きな扉が目立つフランス風ロシア料理店。食べログ評価3.8を越す名店だ。
名物は「キャベツロール」。4時間から5時間ブイヨンで煮込むことで、口の中でとろけるような触感を生み出している。中に入っている肉もナイフでスーッと切れるほど柔らかで出汁スープが染み込んでいる。
ロシア風プリンは彩りが良い。滑らかで味も良し。
ロシア風コーヒー。見たことのないビジュアルに驚かされるが、ホットコーヒーがグラスに入っている。上にたっぷりのクリーム。グラスの縁に砂糖が付けられている。
[日曜・祝日]11:30-16:00、17:00-22:30
④鰻禅
下町風情のふっくらうなぎ
浅草駅から吾妻橋の方へ7分ほど、下町風情残る吾妻橋に店を構える「鰻禅」。「鰻禅」と大きく書かれた看板と暖簾。昔ながらの店内は少し狭めだが、カウンター席にテーブル席、奥には座敷が用意されている。
「おいしい鰻を食べてほしい」というシンプルな思いから、鰻は注文を受けてから一匹ずつさばいている。注文が入ると店主が活鰻を素早く割き、鰻の状態をじっくりと見極めながら丹念に焼き上げる。旨味が最大限に引き出されたとろけるような食感。蒸しのひと手間を加える関東風鰻重はふっくらした食べ応えが特徴だ。
【土曜・日曜】11:00-16:00
⑤麺 みつヰ
ラーメンへのきめ細かいこだわり
浅草の裏手、本願寺のほど近くに店を構える一軒のラーメン屋、「みつヰ」。あまりに細い道にあり目立たないので一見見過ごしてしまいそうだが、食べログラーメンTOKYO百名店に数えられる名店だ。
人気店「七彩」の出身という店主。ちなみに「七彩」は煮干しの効いた喜多方ラーメンの店だ。
ラーメンは細麺と手もみ麺が選べる。オーソドックスなのは細麺だが、手もみ麺も独創的で人気だ。手も麺は茹でる前に店主が手で平たく揉んでから茹でられる。混んでいなければ10分ほどで提供される。
鶏の旨味と香りが口の中に広がる淡麗スープ。中太の縮れ麺は、もちもちとした食感と噛んでいると小麦の甘みを味わえる。麺の面積が広く、スープと良く絡む。
トッピングのチャーシューもハイレベル。低温調理したもも肉は、柔らかさと強い旨味。高級ハムに近い弾力がある。バラ肉のチャーシューは、炙ることで香ばしさとホロホロと溶けるような柔らかい食感を味わえる。
穂先メンマは柔らかさと程よく残った歯応え。チャーシューの下に蓮根が隠れている。これらのシャキシャキとした歯切れの良い食感がいいアクセントになっている。
シンプルながら丁寧に作られた一杯。
[日曜]11:00-16:00
⑥まさる
「江戸前」高級天丼のメッカ
東京は古くから豊かな海産物に恵まれた。そんな「江戸前」のおいしい海産物をより一層引き立てるよう発達したという「天ぷら」。そんな歴史の流れを汲む、高級路線の天丼屋「まさる」は、地元の人から全国の食通まで幅広い人気と評価を得る名店だ。
大入江戸前天丼はお新香がついて3800円。目を引くサイズの車海老、穴子、キス、メゴチがドンとご飯の上に鎮座。魚介系のみで構成される贅沢な丼。
提供時は丼の蓋が垂直に立てかけられている。車海老は繊維が太く、プリプリ。この瑞々しさと旨味の濃さには脱帽。
穴子は肉厚でこれまた見事なサイズ。他のネタよりも衣がやや厚めでサクサクに揚がっている。身はふっくらで皮にトロリとした食感と濃い風味。喉の奥にずしっとくる。
⑦並木藪蕎麦
創業100年の超老舗
浅草駅から徒歩約1分。雷門の近くにお店を構える江戸蕎麦の名店「並木藪蕎麦」。創業100年以上の名店はいつも長蛇の列を作っている。
蕎麦の文化は江戸時代に始まり、江戸生れの「藪」、大阪が起源の「砂場」、信州出身の「更科」は、老舗御三家と呼ばれていた。
そんなそばの歴史を形成してきた「藪」の名にふさわしい味を今も継ぎ続ける。
人気メニューの鴨南蛮は肉厚でとても柔らかく、旨味の詰まった濃厚なつゆと相性抜群だ。
メニューには海外の観光客にもわかりやすいように英語で説明も書かれている。本物のそばを食べるなら、江戸から変わらぬ味を守る名店で。
⑧とんかつ ゆたか
国産小麦100%のサクッと軽い衣
地元で愛される落ち着いたとんかつ店「ゆたか」。
豚本来の味を楽しめるように自家製造の国産小麦パン粉、高級綿実油を使用して揚げる。肉本来の甘みを感じられるこだわりの国産豚を使用。
口に含むとサクッとした軽やかな触感、そして甘みのある肉のうまみが広がる。揚げ物なのに胃もたれしないのは油と衣の賜物か。塩やウスターソースでさっぱりと食べられるとんかつ。
ゆたかはポークソテーも美味。見た目よりしつこくなく、醤油味の比較的あっさりしたもの。ロースかつと同じクオリティの肉を、よりさっぱり楽しめる。
このお店は昔ながらの雰囲気でほっとできる。それでいてきれいな内装が人気だ。
⑨ヨシカミ 浅草店
旨すぎて申し訳ないス!
創業69年、昔ながらの変わらない外観、「旨すぎて申し訳ないス!」の看板が目に入る。昭和から愛され続けるヨシカミは浅草で人気の洋食屋だ。店内には数多くの色紙が並べられており、カウンターからは厨房がよく見える。
ビーフシチューはかなり具沢山。柔らかく煮込まれたビーフも大きく、ゴロゴロ入っている。コク深いデミグラスソースはどこか日本的な味わいにも思える。
そんなビーフシチューと白ごはんを合わせるとごはんが甘く感じられて実に美味。これは白ごはんがベストマッチだ。これぞ下町洋食の真髄といったところか。
ステーキやオムライスにシチューなどの洋食屋定番のメニューは勿論、
テイクアウトも可能なカツサンドも人気だ。
⑩初小川
鰻本来の味わい
「初小川」は食べログうなぎ百名店2019にも選出された鰻重の名店。浅草駅からおよそ5分、雷門のほど近くに店を構える。創業は明治40年というから驚きだ。
鰻重(上)、4300円。江戸前らしいふわふわの鰻に仕上がっている。蒸しを施した、お手本のような関東風の鰻に。鰻自体の旨味がたっぷり引き出されている。甘さの強い濃厚なタレに、鰻の質の良さ。これを受け止めるご飯はかなり緩め。
伝統の味を、風情ある土地で。
⑪駒形どぜう 本店
江戸時代から続くどじょう料理店
「駒形どぜう」の創業は1801年。江戸幕府11代将軍、徳川家斉の時代だ。初代越後屋助七は武蔵国(現埼玉県北葛飾郡)の出身で、18歳の時に江戸に出て奉公した後、浅草駒形にめし屋を開く。当時から駒形は浅草寺参詣ルートのメインストリートであり、店は大繁盛であったという。
仮名遣いでは「どじょう」。もともとは「どぢやう」もしくは「どじやう」と書くのが正しい表記だが、それを「どぜう」としたのは初代越後屋助七の発案だった。 文化3年(1806年)の江戸の大火によって店が類焼した際に、「どぢやう」の四文字では縁起が悪いと、有名な看板書き「撞木屋仙吉」に頼み込み、奇数文字の「どぜう」と書いてもらった。これが現在まで続くのれんとなっている。
平たい鍋に溢れるくらいたっぷりのどじょう。気の短い江戸っ子のために、すぐ火が通る底の浅い鍋になっている。炭火も風情があって良い。どじょうは骨までとろとろに柔らかい。
割下はそんなに甘くはなくて出汁感強め。サラサラしている。白身魚のあっさりした味わいながら、食感が良く味付けがしっかりしている。
⑫グリル グランド
伝統と人気の下町洋食
浅草の観光スポットから少し離れた、いわゆる観音裏にある洋食店。「DOTCHの料理ショー」や「和風総本家」などでも取り上げられた有名店だ。その歴史は長く、現在の店主で3代目である。
名物は特製オムライスとオムハヤシ。魚介の旨味が効いたスープも美味。
特製オムライス1,800円。ケチャップでなくデミグラスソースを使った特製オムライスは3代目が開発した。卵が黄金に輝く照りとデミグラスソースの深いブラウンが美しいコントラスト。卵は中が半熟トロトロになっている。デミグラスソースは野菜がよく煮込まれた深みのある味わい。ケチャップライスと柔らかいチキンとの相性もバッチリ。
⑬弁天山美家古寿司
創業150年の江戸前ずし
江戸前寿司の始祖、華屋与兵衛の流れをくむ「千住みやこ寿司」で修行をした初代金七が、慶応2年(1866年)に浅草 金龍山浅草寺の鐘桜の下で浅草弁天山みやこ寿司を開店。
酢飯、手を加えたすしダネ、新鮮な山葵と煮きり醤油。この4つのバランスによって寿司の美味さを最大限に引き出す。これぞ江戸前ずしの真髄。5代目はご高齢だが、英語がかなり堪能。外国からのお客にも丁寧に英語で説明してくれる。
煮きり、ツメ、ヅケ、酢〆、昆布〆など古典的な技法を今もなお守り続ける。伝統の味をここ浅草の地で。
【夜】17:00-21:00
【日曜】11:30-18:30
⑭本とさや
この肉はリピート不可避!
浅草の街によく馴染むレトロな店構えの焼肉店、「本とさや」。食べログ 焼肉 百名店 TOKYO 2020にも選ばれた名店中の名店だ。
ナムル 500円。ごま油と調味料をしっかり揉み込まれていて美味。味も良くボリュームも満点だ。この店はこういうサイドメニューも評判高い。キムチもおすすめ。
上タン塩ハーフ 1050円。やや厚めのカットで塩胡椒は強めだ。少し焦げ目が出るくらいに炙って表面に肉汁が滲んできたら食べ頃。ブリブリ食感でジューシー。
和牛上ハラミハーフ 1150円
見た目も鮮やかで食欲をそそられる。上ハラミは熟成がしっかり旨味を引き出しており、赤身の色が深く明るい。
⑮元祖やきかつ 桃タロー
元祖にして集大成
「焼きかつ」とは何か。揚げたかつを焼くことによって肉汁を閉じ込める、ユニークな逸品。あつあつの鉄板に焦げ目のついた焼きかつは一度食べたらやみつきだ。上野精養軒で修行した先代が精養軒のミラノカツレツを基に考案した調理法だそうで、以来根強いファンを持つ料理である。焼きかつの肉は、脂身がほとんど感じられないアッサリ系。衣は油切れがよく、サックリしている。ここに香味野菜たっぷり、自然な甘さの特製ソース。この三位一体攻撃のお陰で「揚げもの」らしからぬ軽めの後味とボリューム感を両立。
オムライスも美味。豚肉と玉葱の甘さをケチャップライスに凝縮。オーソドックスな見た目を裏切り旨さ満載だ。わりと厚めな薄焼き卵が濃い味をしっかり包み込む。
[土曜・日曜]11:30-15:00、16:45-21:00